第4話・おかわり御免!

 今回のエピソードは、第3話から1ヶ月ほど前の晩秋の物語。舞台は、学芸員課程の見学学習で訪れた芸術の森。そこで、魅せたラビの恐るべき習性とは?それでは、本編の始まり、始まり~。
 

その日は、珍しく雪の降りしきる日だった。
 昼下がり、真駒内駅のバス停でバスを待つみっつは焦っていたが、いつも通りのクールなポーカーフェイスで、傍目には鋭い眼光の色男としか映らなかっただろう。
 だが、内心では(集合時間に間に合うかにゃ?)と焦りまくっている、時間に追われ典型的な現代人だった。
 そんな内にバスが来て、乗車した所でメールが来た。
 [今、どこだ?俺は、歩いて向かっているよ。]
 案の定、ラビだった。
 それに対して、
 [バスの中だよ。お前、間に合うのか?]
 と、みっつ。
 更にラビの馬鹿が、
 [今、君の乗ったバスを見たっぽい。]
 と、返信が来たのを見てみっつは、
 (お前、マズイだろ!俺のバスは出発したばかりだから、俺のバスは芸術の森まで15分は掛かるぞ!当然、歩きなら30分は掛かるだろ!アホだな~!)
 と、みっつは心配の真似事をしていたが、遅刻してきた方が面白いという考えに至り、
 [なら、間に合うぞ~。]
 と、白々しくも返信したのであった。
 しかし、芸術の森に到着したみっつを唖然とさせたのは、何事もなかったかのように集合場所にたたずむラビの姿だった。
 みっつ 「なしたの、ラビ?ちゃんと、遅刻して来いよ!」
 ラビ 「は?何、言っているんだ?そうそう、さっき見たバスは一本先のバスだったようだよ。」
 どうやら、ラビは石山の玉ちゃんが仮の住居としているアパートから歩いてきたそうで、徒歩で30分だったらしい。期待させておきながら、全くつまらん!
 その日の見学のメインは亀山良雄と言う画家の特別展で、その絵の感想は「奇妙」の一言に尽きるものだった。どうやら、かなりの戦時体験(捕虜になったり、味方の死体の漂う海を彷徨った)の持ち主だったようだった。
 それを踏まえつつ、みっつとラビの2人は、引率の白髭教授に気付かれないように、
 みっつ 「ヤバイよな、コレ!」
 ラビ 「あんま面白くないな。」
 と、話していた。果ては、
 ラビ 「腹減ったな・・・。」
 みっつ 「おう・・・。」
 と、更に背徳的な言葉を繰り返していた。
 その日、偶然にも2人揃って何も食べていなかったので、かなり2人は飢えていた。幸い、大雪の為に野外博物館の見学が中止となり、早めに見学が切り上げられると、2人は近所の[常盤そば]という店に速攻で向かった。
 ラビ 「よ~し、食うぞ!」
 みっつ 「当たり前だ!今日の目的はなんだと思ってんだ!?」
 ラビ 「お前は、何を食うんだ?」
 みっつ 「どれも、旨そうだな・・・。じゃあ、このトンカツ御膳にするよ。」
 ラビ 「そうか、俺はこのうどんセットにするよ。」
 店内に入った2人を迎えたのは、若いお姉さん達だった。
 2人は、注文の後に、
 みっつ 「この店は中々心得てるな、ラビ殿」
 ラビ 「うむ。全くですなぁ。」
 と、お代官トークをしながらも、4つのスケベな眼球は店員のお姉さん達から全く離れなかった。運ばれて来た料理は、正直旨かった!!!空腹の2人は、すごい勢いで食欲を満たして行った。そして、この2匹の獣は店頭で[ご飯、お替り自由]の張り紙を見逃していなかった。なんの躊躇いもなく、呼び出しボタンを押し殴る2人を最初の内は、
 お姉さん 「はい?なんですか?」
 と、満面の笑顔で注文を受けに来ていたお姉さん達も、それが2度、3度と続くと微妙に顔を引きつらせていた。異変に気付いたのは、やはりみっつだった。
 みっつ 「おい!ラビ、そろそろ・・・。」
 ラビ 「悪い!ボタン押してくれ。」
 みっつ 「お前、次で4杯目だろ!止めておけよ、そろそろ!」
 ラビ 「まぁ、気にするな。」
 みっつ 「いや、お前は気にしておこうぜ!仕方ないな・・・。」
 [ポチッ]と、色々な意味で終わりを意味するボタンを押したみっつは、注文を受けに来たお姉さんを正視出来なかった。そして、
 ラビ 「すいません!お替り下さい!」
 店員 「・・・。」(無言で茶碗を受け取る)
 入店した当初は、接客の良い人が僅か30分で不良店員に堕ちてしまったのは、悪しきラビ効果だと断言できる!
 みっつ 「食ったし、行くぞ!」
 ラビ 「え~!あと、1杯、残ったつゆでおじや食わしてくれよ~。」
 みっつ 「うるせぇ!そんなん、玉ちゃんに作って貰え!」
 結局、2人で7杯を食べた2人組に対して店員達は「この穀潰しどもが!!」という眼差しで会計をしていた。その間にも、
 ラビ 「まだ、腹8分目だなぁ」
 と、ラビは無神経にも店員に聞こえる声量で語っていて、店員達の怒りの火に更に油を注いでいたが、ラビが店員の怒りに気付くはずもなかった。  (能天気というか、やはりアホだ) 
 と、みっつは再確認しながらも、店員の様子に怯えてもいた。
 帰り道でも、空腹を癒して元気になったラビと対照的に心労から足取りの重いみっつは、
 (この無法者とは、もう絶対に2人では出かけねぇ!)
 と、誓いを立てていたが、僅か1ヶ月後には教訓を忘れ、改めて誓いを立てさせられる羽目に陥る事を知る由もなかった・・・。

 今回のラビの底なしの食欲は脚色の必要が無いほどに現実通りであります・・・。 さて、次回はラビのスタンドプレーから玉ちゃんを傷付けてしまい、更には、冷静なみっつが大暴走!?混乱を極める道北旅行編!第5話「道北湯煙温泉~死闘編~」にご期待下さい!

※この物語は事実を元に構成されたノンフィクションです。
           [総監督・原作・監修] 海ちゃん
           [脚本・シリーズ構成] みっつ



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